ワインセラーで温度管理が鍵となる理由
ワインセラーの温度管理は、ワインの品質保持に不可欠だ。つまり、ワインセラーの温度管理のポイントを正しく押さえることは、ワインセラーでいい買い物をする以上にワインを最大限楽しむことにも繋がる。そんな「温度」をテーマに、当記事でワインセラーの性能を紐解いていく。
ワインセラーの温度管理の重要性
ワインを最適な状態で楽しむうえで「温度」というのは重要なポイントだ。ワインにおける温度とは主に二つの意味合いがあり、一つはワインを保管するうえでの「保存温度」、そしてもう一つが「飲みごろ温度」と呼ばれる実際に味わうときに重要な温度である。
より詳しく知りたい方はこちらの記事も参考にしつつ、ぜひこの機会に違いを押さえてほしい。
ワインの品質を保つための理想的な温度とは
名前ワインの味や香りを最大限に楽しむためには、ワインの持つ本来の風味や香りを存分に楽しめる飲みごろ温度を知ることが重要である。とはいえ、具体的に目の前のワインの温度が何度かわからない方も多いだろう。そんな時は、ボトルに巻いて使用できるワイン専用の温度計などもぜひ活用してみてほしい。
- 赤ワイン: 16~18度
- 白ワイン: 7~9度
- 泡系(スパークリングワイン): 5~8度
赤ワイン・白ワインの適切な保存温度
ワインの長期保存において、適切な温度を安定して維持することは欠かせない。この温度帯がワインにとって心地よく、熟成という名の化学反応が安定して進むのだ。温度帯としては、赤ワイン・白ワイン共に12〜15度が理想的である。
温度変動がワインに及ぼす影響
ワインは温度の変動に非常に敏感で繊細な飲み物だ。特に高温での保管は避けるべきで、これによりワイン特有の香りや風味が損なわれる。一方、低温での保管は酒石や澱などの沈殿物の生成を促進するため、旨みが損なわれ味わいが変化する可能性がある。
ワインセラー温度が下がらない理由と対策
ワインセラーの温度が下がらない理由、これには大きく2つの原因が考えられる。今後ワインセラーの購入を検討している方も、現在この事態に陥っているという方もぜひ参考にしてもらいたい。
温度が下がらない原因の特定
ワインセラーの温度が下がらない場合、まずは以下の原因を確認することが大切である。
- 放熱スペースの確保: セラーの背面や側面に十分な空間を設けているか確認
- 周囲温度: セラーを設置している部屋自体が高温ではないか確認
- 扉の閉め忘れ: 半開き状態になっていないか注意
これらの要素が温度調整の障害となる場合があるため、適切な対策を講じる必要がある。
冷却方式の選び方と違い
ワインセラーには2つの主要な冷却方式がある。それぞれに特徴があるため自分の環境や目的に応じて選ぶことが大切だが、安定した温度での保管を望む方はまずコンプレッサー式一択で問題ない。
- コンプレッサー式: 強力な冷却性能を備えているため、夏場や冬場でもワインの温度が安定しやすい。もし当式にて温度が下がらない場合、経年劣化を除いてほとんど先述した3つの原因のどれかに該当する可能性が高い。
- ペルチェ式: コンプレッサー式と比べて冷却性能が非常に低く、周囲の温度によっては目的の温度帯で管理できない。特に夏場でセラーの温度が下がらないという方はペルチェ式である可能性が高い。
ペルチェ方式とコンプレッサー方式の比較
冷却方式を選ぶ際には、以下のポイントを比較する必要がある。
- 省エネ性: コンプレッサー式がペルチェ式の3〜4倍省エネ性が高い。
- 冷却力: コンプレッサー式の方が圧倒的に優れる。
- 稼働音: ペルチェ式の方が静かだが、コンプレッサー式も冷蔵庫と同程度の稼働音のものがほとんど。
- 価格: ペルチェ式が10,000円前後〜、コンプレッサー式が30,000円〜。
保管に適したワインセラーの選び方
年間を通じてワインを安全に保管したい場合には、コンプレッサー式一択。よって、ここではコンプレッサー式を想定したワインセラーの選び方を解説する。
ワインセラーのタイプ別の特徴
ワインセラーには一温度タイプと二温度タイプがあり、それぞれにメリットとデメリットがある。
- 一温度タイプ: メリットとしては、庫内を一定の温度で保てるため安定した温度管理が可能。一方、赤ワインと白ワインのように、飲みごろ温度が異なるものについては一度冷やすなどの手間がかかる点がデメリットとなる。
- 二温度タイプ: 「赤ワインと白ワイン」「熟成用とデイリー用」など、用途に合わせた保管が可能な点がメリットとなる。しかし、一温度タイプと比べるとどうしても温度調整に若干のムラが起きるため、安定性という面では一温度タイプに劣るとされている。
設置場所に応じたセラーの選択ポイント
ワインセラーを設置する際の悩みの種となる多くが、設置場所の確保だろう。そこでおすすめなのが、スペース問わずに設置できる前面放熱タイプ。放熱を前面からすることで左右後ろの放熱スペースが最小限に抑えられ、カウンター下やラックの隙間など、限られた場所でも効率的に設置できる。
ワインセラーと冷蔵庫の違い
ワインセラーと冷蔵庫は用途が異なる。冷蔵庫は低温・乾燥環境であり、開閉頻度が多いことから温度のムラが生じやすい。これに対しワインセラーは、60%〜70%の高湿度を維持できるうえワインに適した温度設定も可能だ。また、ワインセラーはガラス扉のものが多く、インテリアの一部としてもオシャレに機能する点も特徴の一つと言えるだろう。
湿度と温度管理でワインを長期保存
次に、ワインの長期保存には欠かせない湿度と温度について解説する。このテーマを深掘りすると、先述したワインセラーと冷蔵庫の違いもよく分かるはずだ。
湿度がワインに及ぼす影響と管理方法
温度だけでなく、湿度管理もワインの保存には欠かせない。特にコルク栓を使用しているワインでは乾燥によりコルクが縮小し、その隙間から微量の酸素が入り込むケースや、最悪の場合には液漏れの恐れもある。また、抜栓時にコルクが折れやすくなっていたりなどの二次被害も考えられるため注意が必要だ。
長期保存に最適な環境の整え方
ワインの長期保存に大切なのは、12〜15度の安定した温度を保つことがまず一つ。次に、コルクの乾燥防止としてボトルは横向きに保管すること。そして、ワインセラーの放熱スペース確保のために、セラー周囲の環境も整えたい。
温度湿度の調整方法
ワインセラーは、自分好みに温度調整可能な機種がほとんどである。設定可能な温度帯はメーカーや機種によって異なり、一番幅が広いものでも0〜18度の範囲が一般的である。
湿度に関しては、多くのワインセラーが自然な蒸発を利用して庫内を適度な湿度に保つ仕組みを採用している。そのため、庫内の湿度が低いと感じる場合は、庫内の蒸発皿に少量の水を補充するなどして湿度を保つ工夫をすると良いだろう。
開封後・抜栓後の管理方法
当然ながら、まず抜栓後のワインはできるだけ空気に触れさせないことが大切である。ワインストッパーなどを使用することで酸化を最小限に抑えつつ、保存場所はこの場合冷蔵庫でも問題ない。
というのも、抜栓後はすでに酸化反応が進み始めており、この反応は出来るだけゆっくり進行させたい。低温環境では化学反応は鈍くなるため、低温保存したほうが少しは風味の劣化が抑えられるのだ。
ワインセラーに必要なその他の機能
ワインセラーを選ぶ際、大きくまずは冷却方式や設置スペースに応じた放熱タイプを軸に決めていくことが大切だが、細かいその他の機能も併せて総合的に検討した方が結果的にいい買い物ができることは間違いない。
振動の少ない静かなセラーの選び方
基本的に良質なワインセラーには防振処理が施されているが、より低振動を追求したい方はインバーターコンプレッサーを搭載したセラーがおすすめ。
インバーターコンプレッサーでは、負荷に応じてコンプレッサーの回転数を制御してくれるため、振動がより低減されるよう設計されている。
高性能ガラスドアのメリット
ワインセラーに使用される高性能ガラスドアの多くは、紫外線カットや複層ガラスによる断熱性が特徴である。
また、側面からの衝撃に弱いというガラスドアの短所を補うため、サイドガード搭載のものを選ぶと強度が増して安全性が向上する。小さな子供がいる家庭では、万全を期すつもりでこの辺りも検討しておきたい。
電気代を抑える省エネ対策
省エネを考える際も、インバーターコンプレッサー搭載モデルが現時点で最も有効な選択肢かもしれない。従来のコンプレッサー式が常に一定の電力で稼働していたところ、インバーターコンプレッサーでは稼働効率を状況に応じて最適化するため、高効率での運転が可能となる。
他にも、設定温度は比較的高めに設定しておくことや、ガラスよりも断熱性に優れる鋼板扉タイプを選ぶことが効果的な省エネ対策として有効だ。
温度管理のコツを習得してワインセラーを使いこなそう!
温度管理を知ることはワインの保管はもちろん、設置スペースや省エネ対策などにも繋がる根本の問題と言っても過言ではない。皆さんも、本記事を参考に温度管理を追求したワインセラーを検討してみてはいかがだろうか。
ライター紹介
田中 純平 (Junpei Tanaka)
J.S.A認定SAKE DIPLOMA
WSET Level3
大学時代のスペイン留学中にワインの魅力に囚われ、帰国後はスペイン語とワインの二足の草鞋を決意。在学中にヴィノスやまざきでインターンを経験し、同年にワイン関連の資格を諸々取得する。卒業後はフリーランスとして独立し、スペイン語レッスンや(株)楽天グループの翻訳担当を経て人気ソムリエが監修を務めるお酒のウェブメディアや西日本新聞社運営の焼酎メディアにて監修ライターを務める。現在は副業にて、ワインD2C会社であるHomewineに携わり、ワインに関する相談にお答えするソムリエコンシェルジュサービスを担当中。